外国の南の島かと見紛うほどの美しい海が広がる角島に伝わる つのしまの民話
波の音を聞きながら、親から子へと語り継がれてきたその物語には様々な教訓が込められています。

中でも有名な鬼の岩伝説は実際に浅瀬に鬼の投げたとされる岩が残る、不思議な伝説。
ストーリーとしても面白く、土地の地形にも関係しているので、この伝説と実際の場所を照らし合わせてみながら旅をしてみるのも楽しいのではないでしょうか。
つのしまの民話 『鬼の岩伝説』

角島の海岸線沿いを走っていると浅瀬にポツンと大きな岩が打ち上げられているのが目に付きます。
海岸沿いの堤防には鬼のイラストが描かれていて、可愛らしい鬼が迎えてくれます。
角島にのこる古い民話の内容は、こうです。
そのむかし、島戸の高坪山に鬼族の大将・赤鬼が住んでおりました。
赤鬼は北浦一帯どころか、はるか遠くまで勢力を伸ばしており、里へ下りては食べ物やお酒をくすねて悪さを働き、大変威張っておりましたので、村人はたいそう困っていました。
そのころ、光明山のふもとの安寿寧寺には小間使いのお夏ちゃんという気立てのやさしい娘がおりました。
島小町と言いはやされるほど可憐なお夏ちゃんの姿を見そめた赤鬼は、どうにかこうにかお夏ちゃんを女房にできないかと考えます。
しかし光明山には瀬戸の守り神である弁財天様が鎮座しており、赤鬼にはどうすることもできません。
あるとき赤鬼は思い余って海を渡り、弁財天様の前に出て「お夏がほしい」とお願いをしました。
弁財天様は、夏至の日に海士ヶ瀬を一晩のうちに埋め尽くしたら願いを聞いてやると約束してやります。
赤鬼は踊りあがって手下たちに岩を運ばせて準備し、約束の日を待ちました。
一方、弁財天様は鶏をたくさん集めて「私が右手を上げたら何時でも夜明けを告げる声を上げなさい」と言いつけました。そうして約束の夏至の日、響灘に太陽が沈むのを合図に鬼たちは一斉に準備しておいた岩を海へと投げ入れていきました。
その鬼たちの勢いはすごく、見る見るうちに海を埋めていき、夜明けには陸続きになりそうなほど。村人はこれは大変だとハラハラし、弁財天様も「鬼どもがこんなに頑張るとは」と慌てた様子でした。
しかし弁財天様がスッと右手を上げると、待ち構えていた鶏が一斉に夜明けを告げる声を上げました。
鬼どもはたいそう悔しがり、村人たちは弁財天様に感謝して鬼どもが逃げた高坪山に祠を立てたそうです。
このときに鬼が投げた大きな岩が、角島大橋を渡っているときに見える鳩島。
干潮時に歩いて渡れそうになる海士ヶ瀬は、小さな岩をたくさん投げたところだといわれています。
実際に、今ある場所ですね。
なにも知らなければ、ただの風景のひとつですが、鬼の岩伝説を知っていると「あれが鬼たちが投げた岩」なのかもしれない
そう思えたりして、海の美しさばかりに目を奪われていたのが、他のことにも目を向けるようになります。

なにも知らなければ素通りしてしまいそうなところに、そんなお話があるなんて面白いですよね~
角島の海岸沿いを走っていると現れる鬼の岩は、この時にくやしがった赤鬼がわし掴んで投げた岩だと言われていて、大きな鬼の指跡が深々とついているのだとか。
この鬼の岩伝説が先に現れたのか、それとも不思議な岩があって「これは鬼が投げたに違いない」と伝説が後からついてきたのか。
日本に残る伝説や民話には不思議なものが多くありますが、本当だとしたらとても興味深くて面白いお話ですよね。
鬼の岩伝説はどこからが始まりなのかな?